人材獲得競争が産業界全体で激化する中、建設関連各社が学生に有効な企業PRの手法に知恵を絞っている。多くの学生がコミュニケーションツールとして使うメッセージアプリ「LINE」を活用した企業知名度の向上や、仮想現実(VR)を使った自宅インターンシップ(就業体験)など新たな取り組みを展開。他社との差別化を図って独自性をPRし、人材の確保につなげたい考えだ。
オリエンタル白石は17年11月、同社のイメージキャラクター「みまもりちゃん」のLINEスタンプの販売を開始した。「ご安全に」「パトロール中」など、建設現場をイメージしたメッセージ付きのスタンプ全40種を展開している。同社の担当者は販売の経緯について「建設業に根付いている3Kのイメージを払拭(ふっしょく)し、まずは若い世代に建設業への興味を持ってもらいたい」と説明する。
大学の夏休みを活用して多くの企業がインターンシップを開催する中、一風変わったインターンシップに取り組んでいるのが大成有楽不動産だ。同社は募集する3職種のうち「施設管理コース」の希望者を対象に、組み立て式の「VRインターンシップキット」を配布。東京で開催されるインターンシップへの参加が難しい地方や遠隔地に住む学生に自宅でインターンシップを疑似体験してもらう。「VRを使ったインターンシップは初めて。リアルな現場を体験できた」と話す学生もおり、反響は大きいという。
学生の関心が高い「働きやすさ」を全面に出して魅力をアピールするのは日本工営。同社は7月、WLB(ワーク・ライフ・バランス=仕事と家庭の調査)の一環として取り組んでいる各種制度を紹介するリーフレットを作成した。多様なWLB施策をそろえ、働きやすい職場環境作りを推進する自社の活動をアピールする。リーフレットで社内施策のほか、ノー残業デーや連続10日間の夏休み取得の奨励などを紹介。冊子は採用担当者の研究室訪問や、会社説明会などでのPRツールとして積極的に活用する。
海外売上高比率が2割を占める東亜建設工業では、17年度から海外勤務を希望する学生を対象としたセミナーを開始した。地元志向の若者が増加する中、海外勤務志望という一部の学生に狙いを絞った限定的なアピール。海外勤務経験のある社員らが講師を務め、海外での仕事や生活の紹介や、課題を設けたグループワークを実施している。海外に特化したセミナーはゼネコンでも珍しく、参加した学生からも好評という。
ヒューマンタッチ総研の調べによると、建設技術者の有効求人倍率は前年同月比0・44ポイント上昇の5・61倍(6月時点)と、37カ月連続で前年同月を上回っており、建設業では学生の売り手市場が続く。多くの学生に自社への興味を促すため、各社が独自性をPRする新たなアプローチを模索している。
日刊建設工業新聞2018年8月27日