名古屋市は、老朽化が進む名古屋城の天守閣を木造で復元する計画を本格始動させる。5月9日、市は竹中工務店と整備事業の進め方に関する基本協定を結んだ。天守閣の設計や施工などに加え、石垣の整備までを竹中工務店に委ねる。
名古屋城の天守閣は1945年に空襲で焼失した後、鉄骨鉄筋コンクリート造で59年に再建された。現天守閣は、躯体コンクリートや設備、石垣の変形など劣化が進み、耐震性にも問題があった。市は名古屋城の天守閣を木造で復元する計画を、市の観光起爆剤にもなるとして、河村たかし市長が先導して進めてきた。
当初、2020年7月の完成を目標に掲げていたが、基本協定では完成目標を22年12月に変更した。理由は大きく2つ。1つは、16年4月に発生した熊本地震の影響だ。熊本城の石垣が甚大な被害を受けたことを踏まえ、名古屋城でも石垣調査を十分にすることになった。調査方法の検討に約3カ月、調査期間に約9カ月を見積もった。
もう1つは予算の問題だ。市は16年度6月補正予算案で特別会計を新設し、基本設計や準備工事費など10億1100万円を計上した。だが、市議会の理解が得られず継続審査が続いた。基本設計の補正予算案が可決したのは17年3月だった。17年4月の市長選で河村市長が再当選したことで、事業が本格始動し、基本協定の締結が実現した。
学識者の意見も仰ぎつつ、綿密に設計の打ち合わせをすることで、22年中の完成を目指す。
竹中工務店のプロポーザル時の提案では、事業費は税込みで最大約505億円だった。できる限り国産材を使って復元する。建設中は復元過程を間近に見てもらえるよう、5階建ての素屋根内に見学施設を設ける予定だ。障害者用の小型エレベーターやチェアリフトを併用するなど、バリアフリーに配慮した設計とする。
(日経アーキテクチュア2017/05/18)