建設会社や開発業者が相次ぎ、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の運営に乗り出しています。建設のみならず運営までを一貫して提供できる体制を整えることで、地主への提案力を強化するとの事。施設運営を新たな継続的収益源とする期待もあります。各社の事例を紹介します。
◆フジ住宅は大阪南部を中心とするエリア特化型デベロッパーだがサ高住の運営棟数が89棟で全国2位。地域での信頼を確立しており、地主への提案に加え自社所有形態でも事業展開することを決めた。今後3年で15棟のサ高住取得を計画する。
◆高松コンストラクショングループの高松建設(大阪市淀川区)は11月14日、兵庫県西宮市にサ高住「エニシエ川西加茂」を開設した。高齢者施設は42棟の建築請負経験はあるが、運営の受託は初めて。グループの小川社長は「サ高住の運営は(継続して収益が得られる)農耕型。仕事の幅を広げていく」と話す。サ高住の展開を念頭に2013年から訪問介護事業所の運営に乗り出し、ノウハウの習得に努めてきた。
←高松建設が兵庫県川西市に建設したサ高住「エニシエ川西加茂」の居室。
◆サンヨーホームズもサ高住運営の事業化に前向きだ。11月13日に発表した中期経営計画では住まいと暮らしの周辺分野への進出を構想。すでにデイサービスセンターの運営を通じて介護人材の育成にも着手した。田中康典会長兼最高経営責任者(CEO)は「教育は重要。自分の手でしっかりやっていくのが基本だ」と意欲を示す。
◆パナホームもグループの介護事業会社と連携したサ高住の運営提案を積極化する。単独での請負経験は豊富だが、パナソニックブランドを前面に出して地主に安心面も訴求。19年3月期までに、50か所の連携案件獲得を目指す。
←パナホームが設計・施工し、パナソニックグループの会社が運営する『エイジフリーハウス宝塚中山』。
サ高住事業で最大の課題は運営事業者選びだ。入居者サービスは事業者によって差が生じるが、それを評価する仕組みが乏しい。開発業者には地主から、建築だけでなく運営までを支援してほしいとの要望が寄せられる。
大和ハウス工業や積水ハウス、ミサワホームなどハウス各社は子会社を通じて、施設運営に関与を始めている。サ高住は“スマートタウン”※に欠かせない要素でもある。
◆積水化学工業は東京都立川市に11月25日、高齢者向け新ブランド初のサ高住「ハイムガーデン立川幸町」を開所した。M&A(合併・買収)を通じて介護サービスの運営体制を整えた。このサ高住は自社開発の団地に隣り合って立地している。
持続可能なまちを作るには住民の世代バランスを取ることがカギを握る。高齢者の住まいを、どのように用意するかは、まちの重要課題だ。サ高住の入居需要は、高齢者や核家族の進展を背景に旺盛。収益性だけでなく地域貢献や、まちづくりを考えて事業に乗り出す地主や開発事業者が増加している。
※スマートタウン(=スマートシティ)とは
ITや環境技術などの先端技術を駆使して街全体の電力の有効利用を図ることで、省資源化を徹底した環境配慮型都市。
世界各地で実証実験が始まっており、日本でも京都府関西文化学術研究都市(けいはんな学研都市)、福岡県北九州市、愛知県豊田市、神奈川県横浜市で官民一体での実証実験が進められている。
日刊工業新聞2015/12/1
パナホームニュースリリース:http://www.panahome.jp/company/news/release/2015/0924.html
コトバンク『スマートシティ』:http://ur0.link/pDpu