次世代ビジネス・防災/不織布で軽量天井材

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【地震崩落時の被害軽く】
帝人が開発した軽量天井材「かるてん」の採用が増えている。大地震時に大型施設で重い天井材などが落下し死傷者が相次いだことから、軽量な不織布で天井材を作ることを構想。2014年に発売した。これまで教育施設や大型商業施設など約10物件に使われ、他にも数件の採用が決まっている。素材メーカーが取り組む“減災ビジネス”。18年度に売上高10億円を目指す。

【施工費も削減】
かるてんは帝人がライセンス生産するポリエステル製タテ型不織布「V―Lap」を両面からガラスクロスで挟んだパネル状の製品(厚みは4ミリメートルが標準)。天井からつった金属製の天井下地材にビス留めするなどして施工する。天井材で主流の「吸音石こうボード」に比べ、柔らかく軽い(1平方メートル当たり0・7キログラムで約10分の1)。大きな揺れで落下し、人に当たってもけがの要因となりにくい。
また、天井材に求められる断熱性や吸音性、遮音性などの性能数値も吸音石こうボードなどにひけをとらないものとした。
1平方メートル当たりの価格(材料・施工)は2万7000円と、耐震対策を施した吸音石こうボードとほぼ同等を実現。国土交通省の不燃認定も取得している。
軽量で柔らかいことから施工現場での取り回しにも優れ、工期や施工費用の削減にもつながるという。インクジェットプリンターによる表面加工が可能で、幅広い意匠製を持たせられる。
開発のきっかけとなったのは東日本大震災。復興に寄与する製品開発を被災地の自治体とともに模索するうち、揺れが強かった地域を中心に、重い天井材の崩落による甚大な被害が発生していることを知ったという。

【新参者の挑戦】
建材の販路開拓には業界での知名度や施工実績が重視されるケースが多く、“新参者”の帝人にとって苦戦が続いた。
ただ、14年4月に国交省が天井の耐震性を強化する法改正に踏み切り、これが建設業界に浸透しだすと軽量天井材に興味を示す設計や施工業者が増えていったという。
施工第1号は東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区)内のトレーニングルーム。これを皮切りに鳥取県のロボット研究所や静岡県のレース場「富士スピードウェイ」、愛媛県の「イオンモール今治新都市」と採用が広がっている。新幹線の沿線にある大阪府の金属加工会社では微震動による天井の落下懸念を抱えていたことからかるてんの採用を決めるなど、労働環境を改善したい工場などの新しいニーズも拾い始めている。

【熊本で再認識】
販売の潮目が大きく変わるきっかけとなったのが4月に発生した熊本地震。被災地で天井材の落下が相次ぎ、軽量な天井材の必要性が改めて認識され、全国からの問い合わせが急増している。(日刊工業新聞2016/10/24)

時事

投稿者: sc