建設業の農林水産業参入進む-地方活性化の「切り札」に

建設業の農林水産業への参入が加速している。農林水産省内で行われた「建設業と農林水産業の連携シンポジウム」では、皆建(新潟県)など地方の建設会社6社が事例を発表。2020年東京五輪・パラリンピック特需にわく都心部とは裏腹に、地方では過疎化と公共投資減少が進行。地元にとどまりたくても仕事がない状態が深刻化している。高齢化や後継者不足に悩む農林水産業も、事情は同じ。農業と建設業の連携が、こうした問題を解決する切り札になる可能性も高い。

【スナゴケ提案】
スナゴケは花壇などと違って肥料や雑草除去の手間がいらないため、メンテナンス費用がかからない。耕作放棄地対策にうってつけ。
高齢化に伴い、地方の中山間地では耕作放棄地が増え、雑草の生い茂る弊害が深刻になっている。緑地帯などに整備しても今度は維持管理の手間が新たに必要になり、雑草防止シートをかけても風で吹き飛ばされてしまうことが多い。この解決策で提案しているのがスナゴケ。整地作業だけで栽培の手間がほとんどかからないため、最適だという。

【アスパラガス】
幌村建設(北海道)は首都圏の有名ホテルやレストラン向けに、アスパラガスを栽培している。栽培は北海道大学や酪農学園大学など専門機関と連携。日光を遮る温室管理などで通常より長期にわたるホワイトアスパラガス出荷を実現した。競争相手がいないため、高価格で売れるという。

【LEDでイチゴ】
小野組(新潟県)は閉鎖型植物工場を利用して、イチゴ栽培を始めた。発光ダイオード(LED)照明により年中出荷が可能で、東京・丸の内のKITTEビルや新宿の伊勢丹に出店。つり下げ型パッケージのイチゴは、700円と1000円の値段で1000円の方から売れたとのこと。

農水省の奥原正明事務次官は「高齢化や耕作放棄地など農業のマイナス要因がいろいろ言われているが、裏を返せば農業参入がそれだけしやすいということ。今こそ参入のチャンスだ」と強調する。農地中間管理機構(農地バンク)による農地賃貸や水利など土地整備事業を通じて参入促進を図る。

(日刊工業新聞2017/2/8)