変化に柔軟対応「メタボリズム流二世帯住宅」
”メタボリズム型二世帯住宅”という言葉をご存じですか。
家族構成の変化に柔軟に対応できる「メタボリズム(=新陳代謝)型」の二世帯住宅だそうです。
二世帯で住む住宅から、その後環境が変化した時も活用できます。
晩婚化や長寿化の影響で、ライフステージと二世帯住宅の関係が変わってきました。
これらの環境変化から、片方の世帯だけになっても暮らし続けられる、家族構成の変化に対応できる二世帯住宅が求められています。どのような特徴があるのでしょうか。
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建て主のニーズの変化に合わせて、二世帯住宅をどのように変えていけばいいのか。そのヒントは、二世帯住宅で起こりがちなトラブルにある。
親が亡くなり住宅を相続するときに、元々一緒に住んでいなかった兄弟とどう分割するかなどでもめて、建物を壊さなければならなくなるケースが後を絶たない。
この場合、これまで二世帯住宅に住んでいた世帯はその住宅に住み続けられず、建て直すなどの新たな負担が発生する。
このような事態に陥らないようにするには、二世帯住宅の設計時点で両世帯の今後のライフイベントを想定しておくことが重要だ。さらに、片方の世帯が転出した場合でも残りの世帯が住み続けられるか、あるいは資産として運用できるかまで考慮しておくことも大きなポイントとなる。
実際に設計された事例
B2Aarchitectsで設計された画像の建物は、資産運用の点を踏まえ、建物を壊すことなく敷地と一緒に分割できるように提案したのが特徴。
兄弟二世帯が住むためのもので、建て主は一帯の土地やマンションなどを所有し、不動産業を営む。そのため、敷地や建物に対する資産運用の意識が特に強かった。
設計に当たり、将来どのような分割があり得るのかを考える。模型で敷地や建物を2?6個に分ける方法を試行錯誤。分割した際の敷地の形状や建物の大きさなどから、最大5分割にするプランに至った。
次に分割を想定し、建物を構造上自立する5つの箱に分けて構成。箱をつなげたり切り離したりすることで、将来は建物と敷地を一体として分割できるようにした。図4に示したように、分割した住戸は部屋数などのニーズに合わせてプランニング。それぞれを独立させて賃貸住宅として運用することも可能だ。
現在は、二世帯住宅という用途を満たすために、中央部に当たる箱を仕切っている。仕切った壁はいつでも取り壊せるように、石こうボードなどで造作した。
課題は、建物の分割をどうフレキシブルにするかだ。構造以外の壁は木材で造作。さらに、2階に上がる階段をどの箱にも設置できるように、全ての箱に階段スペースとなる吹き抜けを用意。リフォームしやすい仕組みにした。
(日本経済新聞電子版2015/9/16)